2009年9月アーカイブ

火災報知機は意思伝達装置

火災報知機を押してしまう人がいます。

本来的な使い方は言うまでもなく火災の報知ですのでスイッチを切ることはできません。誤報でも消防車は確認のために来てしまいます。職員はたいへんです。

でも押す人たちはこれを極めて効果的に使っています。闇雲に押しているわけではありません。

代替コミュニケーション機器AAC としてわかりやすいサインとして使っているのです。

この人たちは火災報知機を押すことの意味は知っています。でも自分の感情はうまく表現できないので押してしまいます。ガマンして、ガマンしてその上で自分のことを気がついて!と叫んでいるのです。

AACとは「手段にこだわらず、その人に残された能力とテクノロジーの力で自分の意志を相手に伝えることにある」中邑1998、意思伝達装置・自助装置なのです。

以前の他害や器物破損という表し方から一歩成長したのです。私たちは「そんなことしなくてもわかっているよ!」というメッセージと方法を伝える必要があります。

「聞いてくれる人のおかげで愚痴もこぼせる」 相田みつを

(職員向けメッセージより)

『心のケア』では、人は誰でも心の中にしっかりと安心して生きたいという心棒を持っていると考えます。

それを阻害しているストレスやこだわりを除去することにより、聡明な人格が現れ本来持っている力を発揮できるようになります。エンパワーメントという考え方に似ています。

べてる風にいうと「病気も回復を求めている。病気や症状のシグナルは回復に向かわせようとする大切な体のメッセージ」と解きます。

問題と思っている行為は「人が辛い体験や悩みに支配されそうになるとき回復(安心)するために軌道修正しようとする行為なのです」。

シグナルが見えたときに回復しようとすることをお手伝いすることが『心を支える』ということなのですが、大人は年季が入っているので簡単ではなく"障害=困った奴"にしてしまいがちになります。その視点では回復しようとしている方の"お役"にたてないのです。

その行為がパターンとなってしまった要素を、テーブルの上に乗せ眺めて考えて見ましょう、とべてるではいいます。

一時停止して『スペース』を置いて考えるということです。

命の格差

米国では4,600万人もの無保険者がおり、そのため皆保険を創設する医療保険改革を大統領が行おうとしているのに対し、政府の負担の肥大化に反対する人たちの大規模なデモが続いています。所得や人種・民族や社会的階層によって生じる健康格差が社会問題化しているからです。

日本では平成10年有馬正高らの調査で、知的障害者は、5~16歳は5.8倍、20~29歳で4.4倍、30~39歳まで3.7倍、40歳代でも2.1倍一般の人より死亡率が高いとの報告があり、受診そのものが困難なことが多いとの声も記されています。この報告書のタイトルは「不平等な命」です。

明治の初頭松沢病院の初代院長として精神医学に尽力した呉秀三は『わが国の精神障害者はこの病気になった不幸に加え、この国に生まれたという不幸を二重に背負っている』という言葉を残しています。現在でもその状況は変わりません。

わが国は少し前まで皆年金・皆保険、そして治安の良い国で格差の少ない国でした。福祉ニーズのピークを目前に控え『命の格差』があってはなりません。

(職員向けメッセージより)

"幸福感"を感じ取れる国へ

私が生きている間にベルリンの壁と自民党政権の崩壊はないと思っていましたが現実になりました。

閉塞感の漂っていた社会保障の分野では大きな変革を起こすことができるチャンスです。

障害者福祉においては「地域と施設」の二分律の制度に振り回され低次元の議論が多かったと思います。

「親亡き後の不安」は大きなニーズがあり「脆弱な地域」で支援することは支援者の低賃金長時間労働に支えられてきたものと思います。

障害者がどこで住む、ということは住宅問題です。障害者施策を狭い部分に追いやり"善意としての福祉"に止めてきた責任は為政者に少なからず責任はあります。

新政権は国のあり方を変えるといっています。障害があろうがなかろうが子供の健全な育成、福祉・保健、教育等は人が生きていく上で必要なことです。包括的トータルに改革しなければならないことです。英国の社会サービス法と差別禁止法のような権利法の制定が必要です。

無駄を省き低成長でも多くの国民が幸福感を感じられる国となるように、今が大事です。

(職員向けメッセージより)

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